はじめに
どこに転職するにしても必須となるのは、暫定版の履歴書と職務経歴書の準備ですが、理系でアカデミックの領域で生きてきた人にとって、職務経歴書って何書いたら良いのか?と思うことが多いようです。
そもそも履歴書と職務経歴書は何が違うか、というと、履歴書は履歴の事実を淡々と記したもの、職務経歴書はこれまでやってきた職務の内容やを示すものなのですが、理系の皆さんは職務経歴書に大学院の研究内容を書いて良いと思います。ただし、例えば学振の「これまでの研究内容」の要領で書くと少し趣旨とズレてきてしまうので、アレンジすることが重要かと思います。
履歴書について
まず、履歴書ですが、こちらは、氏名・性別・顔写真・住所・電話番号・メールアドレス・生年月日・学歴・職歴・免許資格等をフォーマットに従って書いてあればそれで大丈夫です。フォーマットは結構ネット上に落ちていますが、例えばあなたが所属している(orいた)大学のフォーマットを使うのは無難だと思います。
例えば、東京大学では次のような履歴書のフォーマットと記入例が公開されています。
外部リンク:東京大学統一履歴書フォーマット|東京大学
ちなみに、英語でCV(Curriculum Vitae)を書き、海外ポストを狙う場合は、顔写真と性別は書く必要はありません。英語でのCVの書き方は別の機会に。
履歴書に関しては、フォーマット通りに書き進めればいいだけなので以上になります。
職務経歴書について
さて、最も大切な職務経歴書ですが、だいたい以下の項目を準備しましょう。
①職務経歴の概要
②業績リスト
③研究スキル一覧
④教育経験
⑤保有資格
⑥学位論文テーマ
一つ一つ、説明を加えていきます。
①職務経歴の概要 (A4一枚に収まるようにする)
最初に何を専攻しているか、どのような内容で学位を取得しているかを書きます。そして、業績リストの数を列挙しましょう。(たとえば、これまでに国内学会発表XX件(英語での発表XX件)および国際学会発表XX件を行い、原著論文がXX件出版し、特許XX件を取得しました等)
次に各所属(卒研と大学院も含む)でやってきたことを、簡便にまとめます。直近の所属は多少詳しく書きますが、いずれの場合も長くならない程度にしましょう。職務経歴書は人事が見るものだと認識しておきましょう。専門の人に説明するわけではありませんので、詳しい話はむしろ面接等で引き出す感じで大丈夫です。
また、最後に研究以外の何かの業務をしていた場合(例えばラボ運営として何か重要なことをしていたとか)、それを率先して書きましょう。真面目な理系であるほど”研究しかできない”という漠然としたイメージを持たれがちですが、それを無意識レベルで払拭しておくことに繋がります。
②業績リスト
学会発表(国内および国際)、原著論文、競争的資金受給リスト、特許を淡々と書きます。
学会は口頭発表かポスター発表かが明示されており、演題番号や開催地も忘れずに記載してください。
原著論文もフォント等を意識しながら書いてください(et al.は使わないこと)。
競争的資金は学振以外にも、学内限定のものも含めて構いません。誰でも取れるようなものでも、一応選ばれて委託されているわけですから、自信を持って書きましょう。
③研究スキル一覧
なるべく細分化して具体的にも書きましょう。
最初は、研究スキルは漠然とした形で書いてしまうものですが、そういったものは次のように具体例を用いながら記述します。
× 分子生物学実験
〇 PCR, DNA・RNA抽出, 電気泳動法(PAGEおよびアガロース), 培地づくり, 細胞培養…etc.等の分子生物学実験の基礎技術
× 有機合成
〇 液相・固相合成、カラムクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー分液による分離、NMR(二次元)…etc.等の有機合成の基礎技術
× 計算物理
〇 第一原理計算・密度汎関数理論(特にトーマスフェルミ近似や局所密度近似)を用いた数値計算・進化型計算手法…etc.
扱えるプログラミング言語、研究で使ったことのある学問、また、論文を自分で1から書いている場合は英語テクニカルライティングのスキルも書いておきましょう(人によっては自分で書いていませんので)。書けそうなスキルは、とにかくすべて書いてしまうのがポイントです。
④教育経験
ティーチングアシスタント等の教育経験があれば、期間と科目、それから具体的な実務経験を簡潔に書きましょう。例えばレポートの添削・採点・演習補助、授業サポートなど。
塾等でのアルバイトも書いても良いかもしれません。
⑤保有資格
教員免許、薬剤師・医師免許等がある場合は、取得の日付とともに記載してください。資格名は、通称や略式ではなく、正式名称を書きます。
⑥学位論文テーマ
学位論文のテーマと所属、年月日、指導教員の先生を書きます。
②から⑥を先に書いてしまってから、①を書くと良いと思います。
ただ、これはあくまで暫定版です。例えば、「今すぐ履歴書と職務経歴書を送れ!」と言われた時でも対応できるようにしたものです。①の内容はとても重要になるので、応募企業ごとに書き換えましょう。といっても、1から書き直す必要はなく、強みとなる部分を詳しく書くようにして、不要そうな部分を削れば良いです。暫定版を全て詳しいものを書いておくようにすれば、各企業に出す時に該当箇所を削除して提出すれば良いのでラクですよ。
おわりに
というわけで、履歴書と職務経歴書の書き方を解説してみましたが、いかがでしょうか?
文系の人が普通に書く職務経歴書とは違う書き方になるはずですので、あまり文系の人のフォーマットに合わせすぎずに、必要なことを淡々と書いていくのがポイントではあるのです。しかし、文系の人も読むものなので多少気をつけて書く必要があります。
一度書いてしまえば更新しながら使いませますので、まず転職を考えている人は、この2つの書類を準備することをオススメします。


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